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『風立ちぬ』感想

 先日『風立ちぬ』を観てきたのでちょっと感想をば。ネタバレというか観たことを前提に書きますので一応たたみます。
 
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と、その前に・・・
前回の日記への拍手をありがとうございました!

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では、感想です。
 
 単純な感想としては、良い作品だったと思います。相変わらず大作主義は捨てて、しかも今回は実在の技術者をモデルにした映画ですから、派手さもほとんどなかったのですが、そこが良かったように思います。ただ夢に描いた美しいものを形にしたい、愛しい人の側にいたいという、非常に素朴で純粋な想いが伝わってくる映画でした。

 例えば主人公・二郎が設計図に黙々と数字を書き込んでいくシーン。重なるようにして、飛行機が飛んでいく姿が描かれます。具体的な数字を書き込みながら、その数字がどのような形になるのかを明確に頭に描いている。あるいは、自分の夢見た美しいものを、現実に具現化するために技術と知識を積み重ねる。まさに何かを作るということの素晴らしさはここにあるんだ、という強い想いが表現されていたと思います。また、「センスがあり、それに技術が追随する」「人生で最も創造的な時間は10年」という作中の言葉は、宮崎監督が堀越二郎という人物を借りて自分の言葉を発しているかのようで、監督の作り手としての堀越二郎に対する敬意と共感のみならず、強い自己投影が出ているなと。
 ただ、一つ言うならば、主人公をあまりに純粋に描きすぎたかもしれません。あまりにも純粋すぎて、実在の人物を扱った作品としては、リアリティが無いと感じる人もいるかな、と。

 もう一つ、この作品のテーマとして、宮崎駿の持つ「兵器マニア」という面と「戦争嫌い」という面の矛盾をどう描くか、ということが事前にポイントとして上げられていましたが、個人的にはそういった点を深く掘り起こすような描写はあまり無かったんじゃないかな・・・と思いました。戦争や政治というものはほぼ単なる背景という感じで、主人公もあまりそこに踏み込ませず、その代わり主人公とその想いをとにかく純化し、非常に「澄んだ」印象の作品になっているように思えます。そこが人によっては不満に感じるかもしれません。
 この思い切った物語の純化と、監督の自己投影に共感できるか否かが、今作を良いと思うかどうかの分かれ道かなと思います。

 さておそらく最も話題になったであろう「声:庵野秀明」!自分も最初は「ええええええええ」と思ったのですが、やはり実際に観てみるまで分からないと思い・・・ で、見てみた結果としては「△」でしょうか。やはり演技の訓練を積んでいないせいもあり、基本的には棒読み。いや庵野氏なりに頑張ってはいたと思うのですが、やはりプロに周囲を囲まれると完全に浮く。ただ、それが逆に主人公の特別なキャラクターを浮き立たせてもいたかな、と好意的な解釈もできるかな思います。しかし例えばセリフが聞き取れないようなことはなく(あったら問題ですが)、また声質自体は主人公の純朴な性格と合っていたかな、と思います。
 確かいつかのインタビューでも宮崎監督が、今作について「アニメのお決まりの文法を崩したい」ようなことを言っていたと思います。庵野氏の起用については、他の思惑もあるでしょうが、結局はそういうところに行き着くのかな、という気もします。アニメだから、いかにもアニメ的な喋り方をする声をあてなければいけないわけではない。アニメの中でしか通じない文法はなるべく用いたくない・・・というような。もちろんその「文法」がアニメならではの固有の表現として確立されていったものではありますが、一方で「型」にはめこむような作り方に対して疑問を持つ気持ちも分かります。ただ、それでもやっぱり庵野氏起用は行き過ぎかな・・・ということで、「△」としました。ただ、庵野氏起用をずっと伏せたまま上映していたらどうなっていたかな・・・と思うこともあったり。

 前述の「戦争や政治が単なる背景」というのも、もしかしたらそこに関わってくるのかもしれません。というのも、あの時代の政治的な背景をもっと強調すれば、否が応にも物語の悲劇性は増し、さらに戦闘機でのバトルシーンを入れたら、これまた見る人の目を奪うアクションシーンもできたかもしれません。しかし、今作ではそういったシーンはほぼ無く、主人公が夢と情熱を注いだ戦闘機も、実際に戦闘を繰り広げるような描写はなく、ラストシーンで残骸として出てくるのみです。おそらく、そうやってわざとらしく盛り上げる手段を用いたくなかったのかなと思います。(ただ、今作は終始主人公の視線で物語が進むので、戦闘シーンに関しては「主人公がそれを見ていない」から出さなかっただけとも言えるかもしれません)

 最後に「生きねば」という今作のキャッチフレーズ。実際に観るまでは、この言葉は「震災と戦争という困難な時代に直面しながらも、夢を追って生きねばならない」という風な意味かなと解釈していたのですが、このセリフがラストシーンに使われているのを見たときに、これは「自分の情熱を注いだ夢の王国が無残な瓦礫となり、最愛の人を失ってもなお、生きねばならない」という意味だと感じました。
 
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 ある程度は娯楽面を優先させていた今までのジブリ作品と比べて、今作はかなり内向的な作品かもしれません。ただ、昨今のジブリ作品(と言っても『千と千尋』以降は見たり見なかったりだったのですが)はそれなり楽しめても何か小粒な印象があったことに対して、今作はかなり違った種類の映画に仕上げてきたように思えて、そこが個人的には気に入った点でもありました。高畑監督の『かぐや姫』がどんな作品になるかも楽しみです。

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